家の骨組みと言われて私達が思い浮かべる、柱、筋交い、梁で構成されたあの光景。「これぞ、日本の家」とも言うべきものは、在来工法によって造られた建物です。大手ハウスメーカーから一人大工の工務店まで、おそらく、最も多く採用されている工法です。
日本の住宅の多くを占める、在来工法の建物。日本の風土に合わせて考えられた建築方法は、根強い文化として、廃ることなく現代に受け継がれています。
一方で、在来工法における様々な『匠の技』は、近年、工場での加工に取って代わり、施工精度の均一化が図られました。
今も昔も変わらぬ快適さと、近代化と研究成果によって得たさらなる耐久性。これらを兼ね備えた在来工法による住宅は、これからも我が国のスタンダードであり続けることでしょう。
ここからは、在来工法について詳しくご紹介していきます。
在来工法とはなに?
在来工法は、日本古来の建築方法です。基礎の上に土台を作り、その上に柱を立て、水平材の梁をまわし、筋交いで補強をして造り上げていきます。
柱、筋交い、梁という線の構造体で支えていることから『木造軸組工法』とも呼ばれます。柱や梁を設ける位置に制約が少ないことから、間取りの自由度が高い工法と言えます。
従来は、接合部に溝を掘ったりほぞをきったりして組み上げていたため、職人の技術により施工精度に大きな差が出ると言われていました。
しかし、接合部には金物が使用されるようになり、工場で木材を加工する『プレカット』が主流となってきたことにより、その差は無くなってきたと言えます。
高温多湿な日本の風土に適した優れた工法であり、日本における最もポピュラーな工法です。
平均的な工期は、5~7ヶ月程度です。
在来工法のメリット
①増改築、リフォームに適している
柱、梁、筋交いから構成される造りにより、増改築やリフォームに適しています。
壁を取り払ったり、部屋を増築したりといった間取りの変更にあたってもほとんど成約を受けない為、家族構成の変化等にも対応しやすいと言えるでしょう。
②間取りの自由度が高い
建物を設計する際、設計上の制約が少なく、自由に間取りを考えることが出来ます。
③日本の風土に適している
在来工法は、高温多湿な日本の風土に適した工法です。夏は軒やひさしで日光を遮り、冬は太陽高度が低くなる為、室内まで存分に光が届きます。
通気性に優れるため、湿気を溜め込まず内部の腐食等は発生しにくい工法と言えます。
在来工法のデメリット
①工期が長い
ツーバイフォーや鉄骨造と比べ、工期が長いのはデメリットです。通常、在来工法で家一軒を建てるのには、5~7ヶ月程度かかります。
それが注文住宅の場合は、設計にも期間を要します。施行会社と土地が決まっても、設計が始まってから完工までの期間は、10ヶ月以上かかると考えて間違いないでしょう。
②耐震性
鉄骨造やツーバイフォーに比べると、耐震性ではやや劣ると言われる、在来工法。しかし、近年の研究開発により、接合金物を大きくしたり、パネルと組合せて剛性を増すなど、年々その差は埋まりつつあります。
在来工法とツーバイフォーの違いは?
①構造の違い
在来工法が『軸組工法』と呼ばれるのに対し、ツーバイフォー工法は『枠組壁工法』と呼ばれます。在来工法は、柱、筋交い、梁で強度を保っていますが、ツーバイフォーは角材とパネルで作られた面で支えています。
②造り方
ツーバイフォーは、1階の床から上に向かって組み上げて行きます。その為、屋根が掛かるのは躯体が完成する工程の一番最後です。
一方、在来工法は上棟までの期間が比較的短い工法と言われます。上棟までの期間が短いということは、それだけ雨に濡れるリスクも少ないということです。
木造住宅において、建設途中で雨に濡れてしまうことは後々のトラブルの原因にも繋がりかねませんので、できるだけ避けるべきです。
その点では、上棟した後に床などを施工できる在来工法は、 一つ安心材料が多いと考えて良いでしょう。
在来工法の坪単価の相場は?
坪単価の目安は、最低30~最高で80万円ぐらいになります。
在来工法を採用している会社は、大手ハウスメーカーから工務店まで、多岐に渡ります。当然、同じ在来工法であっても価格は各社で大きく異なります。
一般的には『ローコスト』と言われているメーカーは低価格、大手になるほど金額も高くなります。
在来工法採用の主要ハウスメーカーは?
在来工法は、最も多く採用されている工法です。当然、採用しているハウスメーカーも多数あります。
ここでは数ある中から、会社の規模や注目度を考慮し、次の4社を取り上げました。
①住友林業
出典:住友林業|戸建住宅
在来工法のトップメーカーとしてその名を馳せる、住友林業。住宅建材としての木材の販売も行っています。ハウスメーカーとしては最大規模の自社保有林を有するなど、木材には相当なこだわりを抱いています。
②大和ハウス
出典:大和ハウス|注文住宅
業界最大手と呼ばれ、住宅業界全体を牽引する、大和ハウス。鉄骨のイメージが強いですが、在来工法も手がけています。
高耐震、高耐久、省エネをセールスポイントに掲げ、鉄骨とは異なる魅力を持った住宅として、力を注いでいます。
③一条工務店
出典:一条工務店
近年、年間建築棟数が常に上位の一条工務店。高気密高断熱、全館床暖房など、ハイスペックを武器に
他社を圧倒しています。在来工法の『セゾン』シリーズは、吹付とタイル貼りのクラシカルな洋館。その重厚で高級感漂う独特の雰囲気は、中高年層から熱い支持を受けています。
④タマホーム
出典:タマホーム
20代~30代に人気のローコストメーカー、タマホーム。タレントを起用したCMや、キャッチコピーを目にする機会も多いと思います。建築実例には、1000万円台で建てられた家がズラリと並んでいます。
まとめ
近年、新築される住宅は、鉄骨造、RC造が増加傾向にあり、木造住宅は減少しつつあります。しかし、それでも大半を占めるのは木造住宅です。
他の素材にはない木のぬくもりは、長年愛され続けてきました。時代の変化に伴い鉄骨造やRC造など、他の素材の人気が高まることはあっても、木造住宅を求める動きが無くなることは無いでしょう。
在来工法も年々、進化を遂げています。今後は、積水ハウスの『シャーウッド工法』のように、在来工法をベースに他の工法の利点を取り入れていく『ハイブリッド化』がますます進んでいくことでしょう。
古くから伝わる在来工法にさらなる技術が加わることで、どんな未来が待っているのか。今後の発展に期待です。
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