不動産にはその立地に応じてあらかじめ決まった価値が存在します。そして接道条件や前面道路の広さ、接道面の間口などその価値を補正し、個別の物件に対して価格が付きます。
また、売買にかかり売主買主双方に様々なタイトルの税金がかかります。そのような要素をすべて捉えた上で、不動産にはその場面に応じた価格の指標が定められています。
どうして決められているのかその理由について詳細は後述の通りですが、不動産にはその適正な価値に応じた価格相場が諸条件を勘案した上できちんと決められているという事をまずここで押さえておいて下さい。
標準価格がある理由
不動産には定価がない
例えば自動車や家電製品など、おおかたの商品には定価と言うものがあります。これは製品を製造して販売する会社が、その製造や販売にかかるコストに利益を足して、自分たちで決めています。
対して不動産には定価がありません。なぜかというと、所有者自身の持ち物で、誰が作ったわけでもないからです。
勝手な値付けは相場に影響する
なので原則的には不動産をいくらで売ろうが所有者の自由ですが、高く値段を付けしまうと売れませんし、反対に安すぎると不当な事例をその周辺に残してしまい、近隣でその後に不動産を売却したい人に迷惑をかけてしまいます。
そうした不具合を出さないために、不動産にはそのさまざまな条件を勘案した標準価格が決められているのです。
値付けは元来プロの仕事
どの商品を売るにあたっても同じことが言えますが、その商品が消費者にとって値段とのバランス上価値の低いものだと売れません。逆にその価値が高く感じられたら、その商品はベストセラー商品になります。但し低い値段で売ってしまうとそのイメージがついてしまい、後続で商品を作るメーカーは少ない利益率で勝負することを余儀なくされてしまいます。
このように商品に適正な値段をつける行為を値付けと言いますが、これには長年の経験やノウハウが必要です。
特に不動産においては、売買の他に固定資産税や相続税の計算をするためにその金額を計算する必要もあり、ほかの商品と比較してもその値付けは手間がかかります。
そのために値付けのプロではない一般の不動産所有者の為に、不動産の世界には指標となる標準価格が存在するのです。
地価相場を構成する土地の5つの標準価格
不動産にはその観点により5種類の標準価格が存在します。これを専門用語で一物五価と言います。
一つのものに対して5つもの価格指標が存在する商品は不動産をおいて他にはきっと無いでしょう。その価値を示す5つの要素についてその内容を説明しましょう。
実勢価格
これは最も一般の方が目にすることが多い、新聞の折り込みやポスティング広告などで自宅に入るチラシに書いてある近所の売り物件の価格です。
予めその周辺の査定がされた後、当該物件についての補正をして、正式な売値として決定されているもので、売買を前提とした取引においての標準価格であると言えます。
基準地価(公示地価)
これは毎年国土交通省から発表される指標で、全国に2万点以上ある基準点の価値を2名以上の不動産鑑定士が鑑定し、土地鑑定委員会の審査によって正式な価格が決まります。勿論鑑定結果についても公表されますので、基準点周辺の地価のベースとして正式な鑑定価格と言う事になります。
相続税評価額(相続税路線価)
対してこちらは国税庁が毎年発表している指標で、日本全国の道路に沿ってその道路に接道している土地の平米単価を決定しています。これを路線価と言いますが用途としては税の計算をするためのベースになる金額であり、必ずしも実勢の価格と一致するものではありません。
相続税路線価に面積を掛け、決まった補正値によって補正した金額が相続税評価額となります。相続税評価額については地域を管轄する役所の税務課で交付してもらえる評価証明書と言う書類に記載してあります。
固定資産税評価額(固定資産税路線価)
こちらも同じく国税庁が発表している指標です。相続税と同じく路線価方式になっていて、それを根拠に評価額を算定し、その評価額が固定資産税の算定基準になります。
また固定資産税評価額と相続税評価額では、その路線価が異なるため、額が違います。評価証明書にはその2つの評価額が別に記載してあるので、間違いのない様に注意してください。
鑑定評価額
余程のことがない限りその出番は少ないと思いますが、例えば区画整理や民間の開発事業による立ち退きや土地の一部収用、建物の一部または全部取り壊しなど、一般売買とは違う補償を伴う場合にその根拠を示す指標になる価格です。
不動産鑑定士や土地家屋調査士がその物件を調査し、積算をして正式な価格を算定します。こちらについてはその道の専門家の仕事なので、目安や指標と言うものはありません。
プロの値付けツールを紹介
先の5つのバリューのうち、専門家の仕事である鑑定評価額を除いて全ての価格について、実は誰でもその指標を知ることが出来ます。適正な価格を提示するうえで必要なこれらのツールをここでご紹介します。
全国地価マップ
こちらは一般財団法人資産評価システム研究センターのwebページで、相続税、固定資産税の路線価と基準値の公示地価をピンポイントで調査できるシステムです。不動産業者が値付けの根拠として参照している中で、最もポピュラーであると言っても良いシステムです。
土地総合情報システム
こちらは国土交通省が提供しているシステムで、全国の基準値における公示地価と、宅建業者から寄せられた売買事例をもとにした実勢価格を地図上のポイントから検索、閲覧できるシステムです。
参考:http://www.land.mlit.go.jp/webland/
REINS MARKET INFORMATION
こちらは公益財団法人不動産流通機構が運営しているシステムで、加盟企業から寄せられ全国4つの不動産流通機構の加盟企業から寄せられた売買事例における実勢価格を検索、閲覧できるwebページになります。
参考:http://www.contract.reins.or.jp/search/displayAreaConditionBLogic.do
土地の価格決めイレギュラーへの対応法
相続税や固定資産税の算定において、該当する土地の路線価がなかったり、土地が借地であったりして、路線価だけではその土地の価値を測れないことが多く有ります。こういった場合、その価格の補正値が予め決まっています。
路線価図を見れば近隣の路線価から借地権割合に応じた補正値の計算方法がありますし、路線価が無い場合は法務局や役所に出向いて評価額の根拠について質問し、回答を貰えばよいでしょう。
実勢価格について大きな開きがある場合は、ほかの3価(もしくは4価)と照合し、最も適当と思われる価格を参考にするのがよいと思います。間を取ってしまう事がっ決して適当な方法ではないので注意が必要です。
まとめ
原則的には自由な不動産の価格の付け方です。実勢価格だけを見て値付けをしてしまうとなかなか手離れしなかったり、税金で損をしてしまったりいろんな問題が生じます。高く売れたらいいと言い切れたものでもないのでそのあたりについてはすべての構成要素を踏まえ、慎重に調べる必要があると言えます。
読者の皆さんが本コラムによって不動産価格の調査において満足行く知識を得ることが出来ていれば、筆者として光栄に思います。