日本の住宅の大半を占める、木造住宅。技術革新や建築基準法の改正等により、その性能は年々進化しています。
30~40年前の建売住宅は、築20年を過ぎればあちこちボロボロでしたが、阪神大震災以降、建売の性能も格段に上がりました。
私の身近では、間もなく築19年を迎える実家の建売住宅にはいまだ戸のきしみ一つありませんし、同時期に建てられた知人の注文住宅も新築当初とほぼ変わらぬ様相を保っています。
風呂やキッチン等の設備は交換・修理が必要な箇所もありますが、屋根、ベランダ、外壁等、躯体に目立った損傷はありません。
近年、鉄骨造も年々需要が伸びつつあるものの、いまだ木造には及ばないのが実情です。ここからは、日本のスタンダードである「木造住宅」について、詳しく見ていきましょう。
木造住宅のメリット
古くから木造住宅が親しまれてきた理由は、いくつか考えられます。日本の風土に適していること、加工が比較的容易であること、建築費用のことなどです。
いまだ大半を占める木造住宅。そのメリットには、以下のようなものが挙げられます。
鉄骨造よりも建築費が安価
「戸建てに住みたい」そう考えたとき、まずは「鉄骨造は高そうだから」と、検討から外して考える方も多いのではないでしょうか?
施工会社を選ぶ際も、ハウスメーカーではなく工務店から探そうと思うと、木造しか取り扱っていないことがほとんどです。
実際には、施工会社やプランによって金額は大きく変動しますので一概には言えませんが、平均的な相場は鉄骨造のほうが高いというのはまず間違いありません。
多彩な外観を楽しめる
家の印象を大きく左右する外観。外観を決定づける大きな要素は、なんと言っても『外壁』です。
木造住宅では、吹付け、サイディング、タイル貼りなど様々な種類の外壁材を選択できます。
施工会社により外壁材の種類は制約を受けますが、前述の通り、施工会社の選択肢も多いので好みの外観を叶えてくれる施工会社を選択できるのは大きな魅力です。
高い断熱性
木材の特徴の一つとして、熱を伝えにくいという性質が挙げられます。防音性、断熱性は使用する断熱材によるところも大きいのは事実です。
しかし、鉄骨造と比較すると、躯体そのものが外気温から受ける影響は圧倒的に少ないため、高い断熱性を期待できます。
木造住宅のデメリット
耐震性
耐震性、耐久性、建物の寿命という観点では、木造住宅は鉄骨住宅に一歩及びません。一般的に、木造住宅の寿命は30年と言われます。
実際は日頃からのメンテナンスをしていれば30年より長持ちしますが、住宅を新築するに当たっては、30年後に今の家族がどうなっているのか一度思いを巡らすことも必要です。
工期
木造住宅の中でも特に木造軸組工法を選択した場合、工期として6ヶ月はみておいたほうが良いでしょう。他の工法よりも工期が長い点に、注意が必要です。
木造に限らず、注文住宅を検討している場合は、施工会社を選ぶところから始めると想像以上に長い年月を費やすことになります。スケジューリングは重要ですので、余裕を持って挑みたいものです。
腐れ、シロアリへの対策
住宅に使用する木材は、乾燥させ、木材に含まれる水分をできる限り低くした状態が良いとされます。
目安となる含水率は、およそ15~19%程度です。含水率が低い木材ほど、経年変化が少なく反りやたわみ等が起きづらいと言われています。
木材の大敵は『腐れ』『シロアリ』です。いくら堅固な造りでも『腐れ』『シロアリ』に侵されては、最悪、住み続けることが困難になります。
当然、施工会社は木材に対して防腐処理、防蟻処理を施しているはずですが、不安な場合は一度確認してみましょう。
木造住宅にはどんな工法がある?
木造軸組工法
日本に古来から伝わる木造軸組工法。柱、梁、筋交いを中心に造りあげる、日本の風土に最適の住宅です。
リフォームや増改築に適していることから、家族構成の変化に対応しやすい便利な工法と言えます。
ツーバイフォー工法
北米から伝わったツーバイフォー工法。高気密高断熱が持ち味で、近年、建て売り住宅やアパートにおいてもツーバイフォーで建てている現場が目立ちます。
高温多湿な日本の風土に適しているのかという根本的な問題はありますが、軸組工法と比較すると工期が短いのは大きなメリットです。
ツーバイシックス工法
ツーバイフォー工法をさらに進化させたのが、ツーバイシックス工法です。
ツーバイフォー工法で使用される『2×4インチ』の規格材ではなく、より厚みが増した『2×6インチ』の規格材を使用します。使用する角材の厚みにより、建物全体の強度と断熱性能の向上が期待できます。
プレハブ工法
プレハブ工法とは、工場で予めパネルや柱などの部材を加工し、現場で組み上げていく工法です。
木造住宅では、木質系プレハブ住宅が該当します。工期が短いこと、品質の安定が期待できることが大きなメリットですが、間取りの自由度に欠けるというデメリットもあります。
使われる木材の種類や特徴は?
木造住宅の主材料は、木材です。工業製品である鉄骨と違い、木材には様々な種類があります。樹木の種類、産地、無垢材か集成材かなどです。
それによって、値段も品質も大きく異なります。一般的に、最も高価と言われているのは国産無垢のヒノキ材です。
施工会社により、使用する材木は異なります。無垢材にこだわる会社を除いては、集成材を使用することが多いようです。
無垢材
一本の木から切り出し、加工した木材を『無垢材』と呼びます。一本の木から取れる材料が限られているため、集成材よりも高価になります。
形状加工はほどこしますが、まったくの自然由来になるため、品質の安定性を保つのが難しく、扱いも難しいとされています。品質が安定した国産の無垢材は、特に高値で取引されます。
集成材
切り出した木材を貼り合わせて角材として使用するのが『集成材』です。レッドウッドやホワイトウッドと呼ばれる輸入木材を加工した集成材は、ハウスメーカーでもよく使用されます。
集成材のほうが安価で品質が劣ると思われがちですが、集成材のほうが低い含水率を保てたり、加工によって安定した強度を出すことができるといったメリットもあります。
木造と鉄骨は結局どっちがいいの?
『木造住宅』と『鉄骨住宅』、それぞれにメリット・デメリットがありますので、どちらが良いかというのは人によって意見の分かれるところです。
住心地や木のぬくもりと言った、目には見えない安心感を木造住宅に求める人は多いでしょう。
住心地に直結する、断熱性能、防音性。『木に囲まれている』という、本能的とも言える安心感は木造ならではです。
施工会社の選択肢が幅広いこと、外壁材も選択肢が多いことなど、こだわりを叶えやすいというのも魅力です。
一方の鉄骨住宅。こちらは、なんと言っても耐震性や耐久性が大きな魅力です。
身近に鉄骨住宅を建てた方がいる場合、その良さを身を持って体感していて『新築するなら鉄骨住宅以外考えていない』という人もいるほど。
木造住宅にはまだ一歩及びませんが、長い年月で見れば、シェアが逆転する可能性も充分です。
まとめ
衣食住は、私達が生活していく上の基本です。その中で、最も高価であり大きな決断が必要になる『住まい』の問題。
住まいの形も人それぞれで、どれが正解というものはありません。しかし、基礎知識がなければ納得のいく住まいづくりも出来ません。
住まいづくりにおいて『基本のキ』とも言える木造住宅。木造住宅について学んだことが、あなたの住まいづくりの第一歩に繋がれば幸いです。