不動産には、その動き一つ一つに税金と言う問題がついて回ります。金額の大きい資産だけに、その負担は所有者を常に圧迫し、疲弊させるのです。
不動産業界では「地主の財産は三代まで」と言う名言がある程、その存在が非常に大きな影響を所有者の資産に対して及ぼす物であることを全てのプロは認識しています。これらの負担を強いられるのは業者では無く、他ならぬ所有者の皆様方です。
本コラムでは特に、ざっくり「引き継ぐもの」と言う認識しかないケースの多い相続不動産について、相続から売却に至るまでに不動産を相続してから売却するまでにかかる税金の全てをつぶさに捉え、そのコストについて皆様に正しい知識を付け対策して頂く為の詳細な説明をさせて頂きます。
不動産にかかる税金の種類
不動産には取得時、所持している間、売却時に、それぞれ税金がかかります。ここに不動産にかかる税金のすべてを列記し、説明します。
登録免許税
原因の如何に関わらず、登記の変更を行うときに必ずかかる税金。法務局に登記の届出をする際に支払う税金。届出書に収入印紙を貼付して納税します。
土地の登記
・相続、法人の合併又は共有物の分割 1000分の4
・売買、贈与、交換、収用、競売 1000分の20
建物の登記
・相続、又は法人の合併による所有権の移転。保存登記 1000分の4
・売買、競売、その他の原因による所有権の移転 1000分の20
印紙税
売買契約や建物建築の契約の際にかかる税金。契約書に収入印紙を貼付して納税します。
その契約金額により税額は異なるので一覧にてご覧ください。
不動産取得税
移転登記が終了してからおおむね6か月~1年半くらいの間に納税通知書が所在地の都道府県から届きますのでこの納付書を使用して納税します。税額は、取得した土地建物の固定資産税評価額の4%です。
消費税
仲介手数料や建物の建築代金には消費税がかかります。消費税は一律8%です。
相続税
相続税は、被相続人の死亡日から数えて10か月以内に納税する必要があります。所有権移転登記よりも前に納税する必要がありますのでご注意ください。
課税額は、相続税評価額-(3,000万円+600万円×相続人の人数)×税率
税率については課税額によって異なります。
贈与税
贈与税は、財産を貰った翌年の2月1日から3月15日までの間に申告、納税する決まりになっています。課税額は貰った財産の金額から控除額を引いて税率を掛けますが、控除額、税率共にその金額により異なります。
固定資産税
固定資産税は年4回に分けて地域を管轄する地方自治体から送付される納税通知書を利用して納めます。納期は地方によって違いますので通知書が届いたら納付期限までにに納税すると考えればよいと思います。税率は原則、固定資産税評価額の1.4%です。
都市計画税
都市計画税は、固定資産税の納付書と同封されて送付されて来ます。固定資産税同様の扱いになります。税率は、固定資産税評価額の0.3%です。
譲渡所得税
物件を売却することによって売却益が出ている場合、その利益に応じて所得税を納税する必要があります。これは物件を取得してから売却するまでの期間が5年を超えるか否かで税率に違いがあります。
5年以下 30%
5年以上 15%
と覚えておいてください。譲渡所得税の計算方法についてはその性質上複雑な要素がたくさんあるので注意が必要です。
住民税
住民税は所得税に連動しているので、不動産の譲渡で譲渡所得が出た場合、その一部に反映されることとなります。
課税額の根拠になる相続税評価額とは
不動産は「一物四価」と言われ、その値付けに当たり重要な根拠になる4つの公表価格があります。実は相続税評価額は、値付けの根拠にもなる下記の四価
実勢価格
公示価格
路線価
固定資産税評価額
これらの数字を根拠に考えあわせて算出されています。最も現在の実質的な価値に近い評価額と言えるのです。
法定相続人の相続割合
次に、被相続人の遺産を標準的な割合を説明します。まず、相続人は3つの順位に分けられ、順位の高いものから順番に権利を得ることが出来ます。
配偶者は常に法定相続人なので順位は無く、最優先される法定相続人です。相続順位の高いものから分配され、その順位に相続人が不在の場合、下位に権利が繰り下がるという仕組みです。
常に法定相続人…配偶者
第一順位…子
第二順位…両親
第三順位…兄弟姉妹
※父母、兄弟姉妹に関しては、被相続人の父母、兄弟姉妹を指します。配偶者の父母、兄弟姉妹は法定相続人ではありません。
配偶者の相続割合は全順位の法定相続人が不在の場合全額です。それ以外のケースについては以下の通りになります。
配偶者と子…配偶者1/2 子2/1÷人数
配偶者と父母…配偶者2/3 父母1/3÷人数
配偶者と兄弟姉妹…配偶者3/4 兄弟姉妹1/4÷人数
※遺言書によってこれとは内容の違う割合が指示されている場合、遺言書の内容が優先されますが、これによって不利益を被る法定相続人は法で定められた最低限の割合(遺留分)を相続する権利があります。
不動産売却にかかる費用、税金などは公平に負担するべき
前項で相続割合の説明をしたのには理由があります。税金も含め、相続不動産を売却するにあたっては様々なコストがかかります。内容としてはリフォーム代、各種手続きの実費や司法書士の報酬、仲介手数料と、金額的に決して小さいものではないものばかりです。
相続とは、財産を貰う事ばかりでは決してないのです。冒頭に記載した通り、複数の相続人が代々に渡り分割して相続を続けていくことで、不動産に関して言えば概算によると三代の相続でその資産は1/10にまで目減りしているという例があります。
税金が払いきれずに物納を余儀なくされたり、維持管理をしていく経済的余裕が無いために荒れ放題の空き家を放置せざるを得ないケースを、筆者は実務で何例も見てきました。
相続とは、負債も含めてすべてを引き継ぐ事。コストも全相続人で公平に負担する事が家族円満の秘訣であると筆者は思います。
まとめ
筆者は今回の執筆をしながら、自身の相続に不動産が無くてよかったと、不謹慎ながら再確認してしまいました。そのくらい不動産の相続には手間やコスト、何より家族の諍いの種がたくさん潜んでいます。
この事実を理解し、該当する読者の皆様が出来るだけ円満に、家族で手を取り合い問題に向き合い解決出来る事を、筆者は切に望みます。