『プレハブ』という言葉は、誰でも耳にしたことがあると思います。しかし『プレハブ住宅』と言われても、ピンとくる人は少ないでしょう。
プレハブと言えば、工事現場の仮事務所や倉庫などの『仮設』として使用する建物を思い浮かべると思います。20年、30年と住み続ける住宅と言われても、しっくりこないのが普通です。
プレハブ工法は『クローズド工法』と呼ばれ、公には工法の詳細が明らかにされていません。対して、在来工法やツーバイフォー工法などは、工法技術が公に公開されているので『オープン工法』と呼ばれます。
オープン工法は、どのメーカーでも工務店でも取り扱うことができますが、プレハブ工法は認定を受けた会社でなければ取り扱いができません。認定を受けている会社の大半は大手ハウスメーカーの名が並び、注目度の高さが伺えます。
直近の10年間において、年間着工棟数に占めるプレハブ工法の割合は、15%前後で推移しています。これからの住宅を語る上で外せない存在と言えるでしょう。
ここからは、プレハブ工法について詳しくご紹介します。
プレハブ工法とはなに?
プレハブ工法とは、工場で予めパネルや柱などの部材を加工し、現場で組み上げていく工法です。
部材や金物の標準化、規格化によりコストダウンを図り、機械やロボット、ベルトコンベアーなどを利用して精密な加工をすることにより、現場での作業を極力減らしています。
プレハブとはプレファブリケーション(Pre-fabrication)の略称で、現場で組み上げる前にあらかじめ部材の加工・組立をしておくことを意味しています。引用元:プレハブ建築協会
プレハブ工法は、主材料や方法などに分けて以下の4種類があります。
①木質系プレハブ住宅
柱、梁、パネルなどの構造部材に主として木材を使用したもの。
②鉄鋼系プレハブ住宅
柱は鉄骨、梁に変わって壁パネルを使用するなど、構造部材に主として鉄骨を使用したもの。
③ユニット系プレハブ住宅
鉄骨または木材をベースとして箱状に組み上げたユニットを工場で作り、それを建築現場で一体となるよう組み合わせたもの。
④コンクリート系プレハブ住宅
工場生産されたコンクリートパネル等を主として構造材に使用したもの。
プレハブ工法のメリット
①工期が短い
工場で部材を生産するため、現場での作業が圧倒的に少なく、他の工法に比べると大幅に工期が短いことは大きな特徴です。
ユニット工法においては、住宅を一軒造り上げる際の工期がおよそ3ヶ月程度です。間取りやボリュームによっては、3ヶ月かからない場合もあります。
②工業化による品質の安定
プレハブ工法で使用される各部材は標準化あるいは規格化されているため、一定水準の品質を保つことができます。また、工場での品質管理も徹底されており、機械生産による高品質な部材が供給されます。
プレハブ工法のデメリット
①間取りの自由度が低い
規格化されているため、間取りに制限が求められます。規格外になると、割高になるので注意が必要です。
②立地条件を選ぶ
施工の際、部屋まるごとの大きなユニットや大型パネル等を工場から運搬する必要があります。
特にユニット工法においては、大型トラックの搬入が必須になります。建設地の立地はもちろん、周辺の道路環境にも関わってきますので、注意が必要です。
③増改築、リフォームには適していない
プレハブ工法のリフォーム、アフターメンテナンスは、大部分を施工会社で取り扱うことが多いようです。
また、リフォーム等に際しては、規格が限定されるなどの制約がつきものです。施工会社によっても異なりますので、確認してみると良いでしょう。
プレハブ工法の坪単価の相場は?
工場生産のため価格が安くなると思われる、プレハブ工法。原価は抑えられますが、取り扱っているハウスメーカーの価格帯は、以外にも他の工法と大きな差がありません。
特に外観にこだわりがあるハウスメーカーは、価格帯が高い傾向にあります。
<坪単価の目安>
最低 65万円~
最高 ~75万円
プレハブ工法採用の主要ハウスメーカーは?
プレハブ工法と言っても、その種類は様々です。
ここでは大手ハウスメーカーから、ユニット工法を主力商品として取り扱う2社を厳選してご紹介します。
①セキスイハイム
出典:セキスイハイム|注文住宅
ユニット系プレハブ住宅の先駆者、セキスイハイム。鉄骨系ユニット、木造系ユニットを取り扱っています。CMやキャッチコピーの印象は抜群で、人気のハウスメーカーです。
②トヨタホーム
出典:トヨタホーム|注文住宅
言わずと知れた自動車メーカー「トヨタ自動車」を母体とするハウスメーカーです。
自動車の技術を活かした鉄骨ユニット工法、鉄骨軸組工法を二本柱としています。本社の愛知県を中心とした東海地方で人気です。
まとめ
『地鎮祭』や『上棟式』を行う現場は、年々減りつつあるそうです。特に『上棟式』は、施主の負担や工事の工程の都合から、ほとんど行われないと聞きます。
幼い頃、近所で行われた『上棟式』。在来工法で立ち上がった柱と屋根の下、大人達がお酒を交わし、お菓子や軽食をつまんでいました。
整然と並ぶ柱に囲まれ青空の下で行われた上棟式は、たくさんの笑顔に溢れていたのがとても印象的でした。
住宅も多様化する現代においては、上棟と言っても室内から青空が見えない景色もあります。在来工法で行われた上棟式の光景をユニット工法で再現すれば、組み上げられた箱の中でお酒を酌み交わすことになるでしょう。時代は移りゆくものとわかっていながら、一抹の寂しさが残ります。
しかし、時代は変わるもの。
早い、高品質な住宅工法は、時代の流れに合ったものです。プレハブ工法は、時代の流れを汲んだ工法と言えます。
道路がアスファルト舗装になったように、都市ガスが普及したように、住宅が工場から運ばれてくる、そんな日が来るのかもしれません。