マイホームがあるにもかかわらず、実家を相続で引き継いでしまって、そのまま売るのも困難だし、手に余る状態で所有している人は多くいらっしゃると思います。
その中で、特に使ってはいないけど空き家でも壊してしまったら固定資産税が高くなっちゃうから手入れもせずにそのまま空き家を残して放置をしている人が大半でしょう。
日本の人口は2011年をピークに減少局面に達しています。住宅の供給率は1976年の時点で100%を超えていたそうです。もう日本の国土に新築を建てる必要はほとんどなく、また都市一極集中により、大都市圏の不動産のみが状態等の中身を問わず価値を持つ異常事態になっています。
人口の効率的な分散をし、地方都市・山村離島の産業を振興して国民の生活を底上げするために様々な国策が繰り出され、それに合わせた特措法が施行されています。
本項はその中でも特に不動産所有者に関係の深い空き家の問題とそれにかかる特措法の内容について説明することで、資産の有効な活用について考えを促すことを狙いとしています。
空き家対策特別措置法とは
空き家の存在についてすべての不動産所有者が真剣に考えなければならないきっかけになったのは、平成27年2月26日に施行された「空き家等対策の推進に関する特別措置法」ですね。
この特措法ではざっくりと、「空き家を放置することに関する罰則的な措置」と「空き家に対し対策(活用を含む)をすることによる支援的な措置」の二本の柱をもって構成されていて、特に支援策については様々な特措法に準じて多岐に渡り制定、検討されています。
放置することによる罰則的な措置の代表的な例としては、
各自治体の条例に基づき、
①倒壊等著しく保安上危険となる恐れのある状態
②著しく衛生上の有害となる恐れのある状態
③適切な管理が行われないことによって著しく景観を損なっている状態
④その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
このような空き家を自治体の判断で定義し、「特定空家」に指定したものについては行政指導のための立入調査や指導、命令、行政代執行の権限を行使できるようになったことが最も大きい事でしょう。
また、従来どんなぼろ家でも建物が建っていることで6分の1に減免されていた土地の固定資産税も、建物が特定空家に指定されてしまったら減免を外されてしまい、更地並みの課税をされてしまうというのも、所有者にとっては深刻な出来事であると言えるでしょう。
空き家は直すか、壊すかの2択が前提
空き家対策特別措置法では、この空き家について、活用をする前提で支援を進めることが明文化されています。
空家等対策の推進に関する特別措置法
第12条
市町村は、所有者等による空家等の適切な管理を促進するため、これらの者に対し、情報の提供、助言その他必要な援助を行うよう努めるものとする。
第15条
気に及び都道府県は、市町村が行う空家等対策計画に基づく空家等に関する対策の適切かつ円滑な実施に資するため、空き家等に関する対策の実施に要する費用に対する補助、地方交付税制度の拡充その他必要な財政上の措置を講ずるものとする。
現在国を挙げて社会資本ストックの長寿命化、それに伴う点検や改修に対し各分野にて特別予算をつけ補助によってその活用を促しています。
中古住宅の耐震・バリアフリー・省エネ化については、点検・改修にあたり補助金が出ています。
耐震基準については、昭和56年の新耐震基準が指標になっていて、一般的にはこれ以前の建物については解体、以降の建物については改修をすることより価値を上げることができると定義されています。
家屋の解体については築年や所有者の経済状況、工事着手のタイミングや業者選定などにある一定の基準が設けられ、基準を満たした案件につきその総費用の半分から3分の2程度を自治体が補助するような制度があります。これらもおそらく国の地方交付税を原資とする事業であると思われます。
空き家の解体にかかる費用
建物の解体にはざっくりとした計算で建築費用の10分の1程度の費用が掛かります。
木造であれば35,000円/坪程度。鉄筋コンクリート造であれば55,000/坪程度がざっくりした基本工事の平均的な単価になります。
この金額がベースになり、解体作業の難易度や周辺道路の状況による廃棄物の搬出の手間によって、金額の変動があります。
簡単に言えば大型の重機を入れて一気に解体作業ができ、大型のトラックを乗り入れてその場で廃棄物を積み込んで搬出できるようなところなら基本の作業で済みます。とてもやりやすい現場ですね。
しかし住宅密集地内の狭小建物で重機が使えないようなところでは作業員が手ばらししたり、遠くに置いた搬出車両まで作業員が廃棄物を手運びしたりしなければなりません。搬出車両が小型であれば運搬に要する手間、回数も増えます。
この手間はともすれば、解体工事の工期を2倍にも3倍にも引き延ばす恐れのある重要な違いです。工期が3倍かかるとなれば、その費用についても3倍とまではいかなくても2倍は覚悟しないといけないくらいの差になるでしょう。
空きや解体により助成金・補助金が出る自治体一覧
青森県藤崎町 | 藤崎町老朽危険空家等除却事業費補助金 | ①町内に存在するもの ②個人が所有する木造建築物 ③公共事業等の補償となっていないもの ④町の実態調査により、危険度、緊急度が高いもの解体工事に要する費用の2分の1以内(上限額50万円) |
福島県南会津町 | 南会津町危険空家等除去事業補助金 | ①条例に規定する助言又は指導を受けていること ②公共事業による移転、建て替え等の補償の対象になっていないもの ③減価償却資産の耐用年数に関する省令に定める耐用年数を超えているもの ④昭和56年以前に建築又は築造されているもの。補助対象経費の ※市町村民税非課税世帯 3分の2(上限80万円) ※市町村民税課税世帯 2分の1(上限50万円) |
山形県山形市 | 山形市老朽空き家除却補助事業 | ①山形市内の存するもの ②木造又は鉄骨造であるもの ③過半が住宅として使用されていたもの ④周囲に悪影響を及ぼしている、又は及ぼす恐れのあるもの ⑤構造の腐朽又は破損などにより、著しく危険性のあるもの補助対象経費 ①建築物の解体・運搬・処分に要する費用の80% ②国土交通省が定める標準建設費の除却工事費 補助金の額(いずれか少ない方) |
高知県土佐清水市 | 土佐清水市老朽住宅の除却 | ①土佐清水市にある個人の住宅であること ②空き家であり、1年以上使用されていないことが確認できるもの ③木造住宅で、昭和56年5月31日以前に建築に着手されているもの ④賃借権等がないこと ⑤倒壊や火災により周囲の住家や一般国道、県道、市道、地区が指定する避難路に被害を及ぼす恐れのある住宅であること補助金額 費用総額の10分の8以内 (上限100万円/件) |
熊本県下益城郡美里町 | 美里町老朽危険空き家等除却促進事業補助金 | 1年以上使用しておらず老朽危険空家等の判定基準に掲げる評定項目の評点の合計が100以上
補助対象経費の2分の1 |