平成31年に消費税が10%に上がることで、考えられるのが住宅の駆け込み需要です。
住宅は価格が高価なものなので2%の増税といえど、かなりの負担増になってしまいます。
「消費税が8%のうちに購入しなきゃ!」と考える人もいるでしょう。しかし、少し冷静になった方がいいようです。
増税で購入費負担が多くなっても、救済措置が取られるので焦って買わない方がいいかもしれません。
ここでは、そろそろマイホームの購入を検討している人向けに、消費税増税が住宅購入に与える影響と、国による給付金制度や減税制度などについて詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
消費税が10%に増税!住宅購入の2つの期限とは?
契約後に建物を建築する注文住宅の場合、購入契約を結ぶ時期と引渡し時期にずれがあります。
消費税8%が適用になるためには、いつまでに契約をしなければならないのでしょうか?
①引渡しの期限
引き渡しとは、売主から買主に住宅の所有権を移転することを言います。
売買契約書には引渡し日が記述されており、その引渡し日が消費税増税になる平成31年10月31日以内になっていなければ消費税10%が適用されてしまいます。
ただ引渡し日というのは、工事の進捗状況によってズレが生じてしまいますので、救済制度が設けられています。
次の項目を確認してください。
②請負契約の期限(経過措置)
注文住宅を建てるときには、工事請負契約を業者と結ぶ必要があります。
この工事請負契約が平成31年3月31日以内に締結されている場合は、平成31年10月31日以降に引渡しになったとしても、消費税8%が適用されることになります。
例えば、建築主と施工主が工事請負契約を結んだ日が平成31年2月10日であれば、住宅が完成して引き渡しになる日が例え、11月10日までずれ込んでも消費税8%になるということです。
ですから工事請負契約の日を平成31年3月31日より以前になるように話を進めておけば、消費税10%が適用されることはないということです。
これは実際の着工日と竣工日及び引渡し日にずれが生じる場合があるので、そのせいで消費税増税の面で不公平が生じてしまわないように設けられた救済措置です。
消費税が2%上がるというのは単純に2%も負担すればいいだけの話ではありません住宅購入品の消費税分もローンで借りれることになるのでそのぶんにローンの金利がのってさらに高くなってしまいます。
詳しく制度を知り、損の無い時期に住宅購入をすることが大事です。
消費税10%の増税が及ぼす住宅購入への影響は?
たかが2%の増税、されど2%の増税です。
たった2%ですが、それによって住宅価格や手数料、需要と供給などに様々な影響が出てきます。
その影響をすべて受け止めなければならなくなるのは、購入者であるあなたかもしれません。
①住宅売買価格
一番影響が著しいのは住宅の売買価格です。
特に注文を受けてから建てる注文住宅の場合は、原価への消費税負担も増すことになるので、増税後は値上げを余儀なくされる恐れがあるでしょう。
住宅販売価格への影響
注文住宅の見積りには、建物本体価格の他に付帯工事費やオプション費用などが盛り込まれることになります。
例えば、建物を建てたり付帯工事をする時に使われる資材にも、増税した分の消費税が組み込まれることになりますので、建物の原価そのものが上がる事になります。(※付帯工事費とは、建物本体の建築以外に係る工事費用のことをいいます。)
原価の上昇をメーカーが飲み込むのであれば消費者に負担は行かないのですが、メーカーとしては利益を出さなければなりませんので、最終的消費者に増税負担が行くことになります。
ローン総額への影響
消費税が2%上がれば建物購入する時に最終的に支払う総額に、その消費税分の2%が加算されます。
2%なら我慢しようと考える人もいるかもしれませんが、高額な買い物ですので2%でも非常に大きな数字になります。
例えば2000万円の注文住宅を購入した場合、消費税8%の時は160万円の消費税になるのですが、消費税10%になると200万円の負担になり、40万円も負担額が増えることになります。
しかも、単純に増税分2%の負担が増えるというだけの話ではありません。
増税2%上乗せした分の費用に対しても住宅ローンを組むことになると、その分に対して、住宅ローンの金利手数料が加算されることになります。
つまり先ほどのケースだと40万円を余分に借り入れすることになり、それに対して金利がかかってくるということです。
そしてそれだけではなく、不動産仲介手数料にも消費税が課税されます
これは後ほど詳しく説明しますが、このようになるということは消費税が上がるということは、住宅価格が底上げされてしまい、消費者への負担が大きくなることを意味しています。
駆け込み需要による販売価格への影響
消費税増税前に駆け込み需要が増えると、メーカー自体が駆け込み需要も想定して販売価格自体を底上げしてしまう恐れがあります。
買い手が多くいると値引き交渉もしにくくなってしまいますので、そういった点においても消費者にとっては不利になる場合もあります。
「今買わなきゃ!」という人間心理は、冷静な判断力を失わせてしまう危険性があるため、購入を検討している人は慎重にならなければなりません。
②不動産仲介手数料
不動産を購入する時の、不動産仲介手数料にも消費税が課税されるため、増税の影響は多少あるでしょう。
不動産仲介手数料はいくらかかるのかと言うと例えば、1000万円の住宅を購入する場合。
(1000万円×3%+6万円)+消費税
この計算で、400万円以上の物件の仲介手数料の上限を求めることができます。
不動産仲介手数料には法律で上限が定められているため、その上限を越えての請求はできませんが、消費税増税分は増えることになります。
不動産仲介手数料はいくら?
宅建業法で定められている不動産仲介手数料の上限は、次のようになります。
・200万円以下の部分には取引額の5%
・200万円超え400万円以下の部分には取引額の4%
・400万円を超える部分には取引額の3%
各金額部分にそれぞれの手数料が加算されることになります。
例えば1000万円の住宅を購入する時には、
(200万円×5%)+(200万円×4%)+(600万円×3%)=36万円
36万円+消費税10%=39万6000円
39万6000円の不動産仲介手数料が掛かります。
消費税8%の時と比較すると多少の金額の違いではありますが、購入者の負担が増えることになります。
仲介手数料はいつ払うの?
不動産の仲介手数料は、不動産の売買契約が成立した時に支払うものです,
売買契約が成立した時点で不動産業者には請求権が生じるため、この時に支払いを済ませるのですが、実際の取引では契約時に半分、引渡し後に半分支払うのが一般的です。
不動産仲介手数料というのは、成功報酬になりますので前渡し金と後渡し金にお金を分けているわけです。
不動産仲介手数料をローンに含むことはできる?
不動産仲介手数料は、ローンに含めることができるクエストできないケースがあります。
住宅ローンに含めることができれば、手持ちの現金を残すことができますので経済的に助かる面もあるでしょう。
不動産仲介手数料をローンに含められるケースというのは借入可能額に余裕がある時です。
住宅ローンは年収に応じて借入可能額というものがあり、その上限に余裕があれば、銀行の判断で不動産仲介手数料を一緒に借り入れできる可能性が高いです。
他にも登録免許税は不動産取得税、専門家への手数料、火災保険なども住宅ローンで借入れすることができます。
逆に、上限いっぱいまでローンを組んでいる場合は、仲介手数料の分までローンを組むことができない可能性があります。この辺りは銀行の判断になりますので、まずは交渉が必要でしょう。
③影響を受けないモノ
消費税増税の影響を受けないものは「土地」の取引です。
土地は消費するものではないという見方から、消費税課税の対象外になっています。また個人の中古住宅購入の場合も。消費税はかかりません。
これは中古一戸建てだけではなく、中古マンションの場合でも同じです。ただし業者が事業目的で中古住宅を購入する場合は、消費税がかかります。
たとえば3000万円の新築住宅を購入する場合
3000万円の新築住宅を購入する場合の消費税負担は、8%と10%の時ではいくらぐらい違うのでしょうか?計算してみたいと思います。
3,000万円×消費税8%=3,240万円
3,000万円×消費税10%=3,300万円
消費税が8%から10%になることで購入金額が60万円増えることになります。
これは仲介手数料や登録免許税などのその他の費用を含めていないので、全てを住宅住宅ローンで賄う場合は、ローン金利でもっと費用負担が増えることになるでしょう。
建物原価が上がることも忘れてはいけない!
消費増税になると我々に提示される価格への消費税が上がるだけではなく、その住宅をプランニングして、建てるまでにかかるコストも増えることになります。
そのため、同じ値段のものを販売するには、徹底して効率化を図るか、それができなければ原価を抑えるために資材を安いものに変える必要が出てきます。
ですから増税の時期は、注文住宅のプランをよく見極めてから慎重に購入する必要があります。
安易に価格を抑えた住宅を選ぶのではなく、本当に欲しいと思ったものを選ぶことが肝心でしょう。
焦る必要なし!増税後でも給付金等で実質的な負担は増えない?
消費税増税前に住宅を購入できなかったとしても、諦める必要はありません。
なぜならば給付金や住宅ローン控除を活用すれば、実質負担を抑えることができるからです。
給付金に関しては、国土交通省が運営する「すまい給付金」という制度のホームページに詳しく説明が記載されていますが、少々内容が難しいため、ここで簡単にまとめて説明したいと思います。
すまい給付金や住宅ローン控除制度を利用すれば、消費税増税のデメリットを打ち消すことができますのでぜひ参考にしてください。
①すまい給付金
すまい給付金制度というのは、消費税が10%になった後に住宅を購入する人に向けた給付金制度のことです。
平成26年4月から平成33年12月まで実施されており、給付金申請書を提出することで適用になります。
この制度は住宅ローン減税の補助的役割があり、所得によって給付金額が変わります。ちなみに給付金自体は非課税になりますので、給付金を得たからといって所得税は課税されません。
参考:国土交通省 すまい給付金
支給される給付金額は?
すまい給付金を申請して支給される給付金額は、給付基礎額を参考に決定されます。
給付基礎額とは収入額に対して割り当てられた基礎額のことで、都道府県民税の所得割が参考にされます。
給付額の計算の仕方は、
・給付額=給付基礎額×持分割合
持分割合というのは登記事項証明書で確認することができる、住宅の保有割合のことです。不動産は契約によって例えばA氏に50%、B氏に50%というように権利を分けることができます。
此持分割合と都道府県民税の所得割ごとに割り当てられた給付基礎額を掛け算して、給付額を求めます。
給付金額は最低10万円から最大で50万円までで、もらえる回数は期間中一回だけとなっています。あくまでも消費税増税分を相殺するために使う制度という位置づけです。
すまい給付金制度の対象者は?
すまい給付金制度の対象になるのは、次のような要件を満たす人です。
<すまい給付金の受給要件>
★住宅を取得する人(※住宅の登記上の保有者になっている人)
★住宅を自分で居住する人
★収入が一定以下であること。(※年間の収入額が650万円以下)
★年齢が50才以上の者(住宅ローンを使用しない場合のみ)
★住宅の登記上の保有者になっている人
すまい給付金の住宅要件
すまい給付金が適用になるためには住宅要件を満たさなければなりません。どんな家が対象になるのかと言うと、次のような要件をクリアしている必要があります。
<すまい給付金が適用になる住宅>
★床面積が50㎡以上であること。これは中古住宅、新築問わず。
★第三者機関の検査を受けた住宅であること。
(※住宅瑕疵担保責任保険加入住宅などがそれにあたる。)
★中古住宅の場合は耐震性の現行基準を満たしていること。
★新築の場合、一定の性能の確保。
(※フラット35Sの基準を満たしている住宅。)
<住宅ローン利用が無い場合>
★住宅を取得した人の年齢が50歳以上であること。
すまい給付金の申請の仕方
給付金を受け取るには、専用の給付申請書に確認書類を添付したものを提出します。
手続き自体は住宅に入居した後にできるようになり、住宅の引き渡し後1年以内が手続きの申請期限とされています。
※ただし、現場のところは1年3ヶ月に申請期限が延長されている状態です。
給付金がどのように支給されるのかについては、給付金申請書が審査された後、申請書に記載した口座に給付金が振り込まれる流れになります。
手続き書類に不備がない場合は、大体1.5ヶ月から2ヶ月程度で入金される見通しです。必要書類の提出先はすまい給付金申請窓口に持参するか郵送で書類を送ることになります。
住宅事業者に、申請手続きを代行してもらうことも可能ですので、注文住宅を購入するメーカーに問い合わせてみましょう。
②住宅ローン控除
住宅ローンを組むことで、所得税額から一定金額を控除できる制度が住宅ローン控除です。
控除される額は、毎年の住宅ローン残高の1%でそれを10年間に渡って所得税から控除することができます。
注意したいポイントは、所得額から控除するのではなく、所得税から控除する税額控除ということになります。
この住宅ローン控除はもともとあった制度ですが、平成26年4月から平成33年12月までの分、消費税増税に向けて制度が拡充されました。
ちなみに所得税で控除しきれない分については、住民税から控除できることになっています。
住宅の適用要件は、「床面積が50平方メートル以上」であることと、「借入金の償還期間が10年以上」であることの2点です。
住宅ローン控除の拡充ポイント
この度の制度は、どの部分が拡充されたのかと言うと、「最大控除額の増加」が、まず一つ拡充されたポイントです。
これまでの最大控除額は20万円かける10万円の最大200万円までの控除額となっていました。
ですが平成26年4月からは最大控除額は400万円まで増え、最大で毎年40万円を10年間税金から控除できることになります。
もうひとつのポイントは住民税の控除上限額です。これまでは9.75万円だったものが、今回からは13.65万円に増やされています。
長期優良住宅に適用される住宅ローン減税
建物の耐震性、耐久性、省エネ性が優れた長期優良住宅に関しては、最大控除額が従来の300万円から500万円へに増額となっています。
住宅ローン控除の申請方法は?
住宅ローン控除を申請する場合は、確定申告で各要件確認のための添付書類を提出して、申告を行います。
入居した年の翌年の確定申告時に住宅ローン控除を申請することになります。給与所得者の場合2年目からは、年末調整の際に控除は適用可能になりますので、住宅ローン控除のための確定申告は不要です。
年収500万円が3000万円の住宅を購入する場合
すまい給付金の参考支給額と、住宅ローン控除の適用額についてそれぞれ説明しています。
すまい給付金は50万円ほど支給される
例えば年収500万円の世帯で、中学生以下の子供が二人と配偶者がいる家庭の場合。
仮に3千万円の住宅を購入する場合、すまい給付金はいくら支給されるのでしょうか?
すまい給付金の国土交通省の公式ホームページで、簡単にシミュレーションができる機能があります。そちらを利用して計算してみると50万円が支給されるという結果が出ました。
住宅ローン控除は10年間で251万5100円
例えば、金利1.450パーセントのフラット35で35年ローンを組んだ場合。
すまい給付金と同じように公式サイトで簡単シミュレーション機能を使って計算してみました。
年収500万円で3000万円の住宅を購入するためにローンを組んだ場合、ボーナス払いゼロで初年度は259000円の控除となり、そこから10年間総額で251万5100円の控除額になるという結果が出ました。
給付金と住宅ローン控除をダブルで活用することで、消費税増税以上のメリットを享受することができるということが分かるでしょう。
さらに増税後は駆け込み需要の反動から価格が下がる可能性が高い件
増税後には増税前の駆け込み需要の反動が出ることが考えられます。
あなたが購入しようと考えているその住宅もしくは住宅プランは、本当にあなたが欲しいと思った内容のものでしょうか?
世間の流れと広告宣伝に煽られて、すぐに購入しようと考えてはいないでしょうか?住宅を購入する上で大事なことは冷静な「目」です。
過去の消費税増税から学ぶ
5%から8%への増税時期には駆け込み需要がすごかったと言う過去の事例があります。
「今買わなきゃ!」という消費者の心理状況につけこんだ煽り営業には注意をしましょう。
宣伝している注文住宅プランは、複数社を比較して本当に自分にとって納得がいくものを選ぶべきです。
国の制度をしっかりと把握しておくこと!
今回紹介した給付金制度や住宅ローン減税制度など、消費税増税に備えた支援制度をしっかりと理解するべきです。
制度を使えば、増税分以上のメリットを受けることができますので、上手に活用しましょう。
値引き交渉しやすいのは増税後
実は値引き交渉はしやすいのは増税後の方です。
増税とともに住宅の需要が下がってきますので、そういったタイミングで購入を考えるのもありでしょう。
増税前もしくは増税後にハウスメーカーは期間限定のプランを提案することも考えられます。
そのため住宅に関する情報は、常日頃からこまめに収集しておくことをおすすめします。
まとめ:住宅購入のタイミングはいつがベストか?
気に入った注文住宅プランが見つかれば増税前でも増税後でもOKだと思います。
増税前なら税金が安いですし増税後になっても、今回説明したように国の制度を利用すれば、増税分を相殺することができるので問題は少ないでしょう。
それよりも住宅の安い広告価格に捕われて焦って買うのは禁物です。
住宅ローン金利の動向や補助金制度などをじっくりと調べて、上手に購入することを考えましょう。