どこの街にでもあるコインランドリー。昭和の時代と違ってどこの家にも洗濯機はあるはずなのに、なぜ消滅するどころか、素晴らしい大型洗濯乾燥機を何台も備えたきれいな大型店が何件も新設されているのでしょうか?
実はコインランドリーの需要は、家に洗濯機があるとかないとかそういうところで動いているものではないようです。コインランドリー業界は今怒涛の勢いで業績が上がり、その特殊性や顧客のニーズも相まってビジネスモデルとしてはかなり成熟したいいものになっているそうです。
筆者は若いころから長期の出張が多かったため、行ったことのない土地に出張に出る際は、そこに行ったことのある先輩社員に何はさておきコインランドリーの場所を聞いたものでした。
考えてみればコインランドリーは、コインパーキングやレンタル収納スペースよりも古くから、町の風景に溶け込んだ不動産ビジネスのオーソドックスとして確立されていたような気がします。
本コラムではそのコインランドリーのビジネスについて、背景から考えてそのメリットやデメリット、市場や収益性について説明していきたいと思います。
平成コインランドリー事情
当初は洗濯機の普及率がニーズにつながっていた
コインランドリーの需要形態は時代とともに推移しています。コインランドリーが世間に台頭し始めた昭和40年代。まだこの頃には単身者の世帯にまでは洗濯機は普及していなかったようです。そのため洗濯機を持っていない単身者が主なターゲット顧客だったようです。
経済の成長とともに、出張族のニーズで加速していく
その後バブル期には、全国をまたにかけて働く出張族が出張先で利用するケースが増えました。需要のベースとしては変化はありませんが、利用者の絶対数がこの頃から増えてきたのではないでしょうか?
クールビズとウォッシャブル
根本的な流れが変わったのが2000年代の前半。洗える衣料や形態安定素材が増えてきたことに伴い、衣料だけでなく布団やカーテンなども洗える素材が台頭し始め、大型の洗濯物をコインランドリーで洗う主婦が増えてきたことがコインランドリーの顧客層に大きな幅を持たせることになりました。だんだん大型化してきた洗濯乾燥機などは、このような重要の変化に対応したものだったのですね。
この流れが現在定着し、コインランドリーのビジネスは現在、幅広い層から支持される成熟したものになっているのです。
コインランドリー経営のメリット
運営の手間がほぼ皆無
コインランドリーを経営するメリットとしてまず誰しもが一番に思うことは、運営に関する手間がほかの活用法と比べ極端にすくないことに他ならないでしょう。
機械を据えて煌々と明かりをともしておけば、どこからともなくお客さんが洗濯物をもって訪れ、次々にコインを投入して備えてある機械をガンガン動かしてくれます。
客単価は意外と高い
そしてコインランドリーを利用する人なら皆さんお気づきだと思いますが、客単価が意外に高いことです。最近の大型機械であれば洗濯から乾燥までをワンストップで行い、一人のお客さんが小1時間くらいの間に1000円から1400円のお金を機械に投げていってくれます。24時間営業なら機械1台当たりどれくらいの売り上げをあげてくれるのか、考えるだけでもすごい金額になるのではないでしょうか。
立地をあまり問わない
また、ほかの不動産ビジネスがその立地条件に依存することを考えると、かえって人気のないこそっとした場所にある方が人の入りやすい優良な店舗を作れることから、よっぽど山奥の山荘みたいな場所でない限り、認知さえすればお客さんは自然と集まることです。場所を問わないというのはかなり大きな成功要因ではないでしょうか?
小規模宅地の特例を適用できる
そして節税にもコインランドリーは一役買うことができます。なんとコインランドリーは「小規模宅地の特例」を適用することができるのです。もちろん小規模宅地の特例を適用するには面積等の制約がありますので、それをクリアすることが前提ですが、開業コストはアパートより低く抑えられるのにアパートと同じ節税効果があるというのは大変大きな魅力です。
コインランドリー経営のデメリット
管理人が居ないオープンスペースであるリスク
対してデメリットがないわけではありません。長時間回転しているオープンなスペースにもかかわらず、管理人が常駐しないスタイルなので昼夜問わず人の出入りがあることに対する危険性は否めません。
人気のない深夜にたまり場のように使われるリスクや、それに起因する犯罪や災害の現場になる可能性があります。
忘れ物が稼働率を下げる
また、意外と多いと言われているのが洗濯物の放置です。忘れ物であれわざと置いて行ったものであれ、ドラムの中に洗濯物が残っていると、回転率が下がり収益にに悪影響を及ぼします。可燃性のごみを投入されていたりすると機械の破損などの問題も生じてくることでしょう。
手離れが良くない
あと、機械が高額で大型なため、一度始めるとなかなかやめれないというデメリットもあります。なんだかんだ言っても日銭の商売ですので、機械の損料を考えると息の長い展開で長期にわたる運営を続けていく覚悟が必要ですね。
独自性を出しにくく、競合の出現に弱い
また、単調なビジネスでもあるので独自性を出すことは難しく、近所に競合店などができてしまうと直接的に売り上げに響いたり、それに対して対応する策が値下げくらいしかなくなってしまうなどの頭で考えてもどうしようもないビジネス的な脆弱さがコインランドリービジネスには見えます。
まとめ
開業資金を回収する期間が長いことがこの現代社会においてはリスキーな商売ではあるかもしれませんが、需要は確実にあります。
また初期投資は高いとは言え、アパートやコンビニ経営と比べたらまだ低コストであるともいえますし、何より時間換算した時の客単価にメリットを感じます。
管理のリスクに関しては運営会社が管理代行するサービスもあるとのことですので、収益はあげたいけれど極力手間はかけたくないという人にはとても良いビジネスモデルであると筆者は思います。