残念ながら住宅ローンを払いきれず、泣く泣くせっかく購入したマイホームを手放してしまった…安心してください。不動産業界ではそんなに珍しくないよくある話です。
それよりも家が競売にかかったり、任意売却してしまった後で残ってしまった残債はどうなるのでしょうか?
家を失ってしまった後に借金が残って、その後始末にまた苦労しなければならないのはあまりにも殺生です。
本項では万が一競売や任売を通じ家を失ってしまったうえで残債が残ってしまった場合
・残債はどのようにして残るのか?
・金融機関はどのように残債を処理するのか?
・本当に全部支払わなければいけないのか?
・適切な対処法はあるのか?
といった残債に対する疑問を解説し、飽くまで債務者としての生活を優先した対処法について詳しく説明したいと思います。
住宅ローンの残債はどうなるの?
いくら不動産とは言っても、使い古した中古品を売却するのですから、新品より高く売れるなんてことはよっぽど特別なケースでもない限りありません。
大半の場合、残債が残ってしまい、引き続き無担保での返済義務が付いて回るというのが一般的な解釈です。
残債は「無担保債権」として残る
司法書士や弁護士に絡む多くの任意売却サイトでは、競売・任売を経た残債について無担保債権として引き続き返済義務を負う、という記述をしています。
それが支払えないのであれば自己破産をすればよいなどと言い切っているものもしばしば見かけます。
競売が終わったら借金はない
一般的に、銀行やローン会社は競売の配当を受け取った後の残債権について、サービサー(債権回収会社)に売却します。
これは競売益で回収しきれなかった残債権を損金として無税償却するために必要な手続きです。
つまり、銀行は不良債権を損金計上して、その分利益を圧縮することができるのです。しかも損金計上した債権は決算処理を経て消滅しています。
難しい表現ではありますが、競売が終わって銀行の決算のころには、残債の債権債務自体存在していないという解釈になるのです。
消滅時効による逃げ切りは可能か?
民法166条~174条の2や商法の522条などで、消滅時効についての定義がされています。消滅時効とは債務者保護のためにあるセーフティネットです。
要は借金には時効があり、時効が完成していればその権利を債務者本人が援用することで消滅させることができるというものです。
商法522条に定められた消滅時効の期間は5年ですが、近年は裁判所の確定判決を得ることで債務名義を取り、その期間を10年にするケースが多くあります。
結論から言うと逃げ切れる
根本的に、金銭消費貸借契約書があるだけでは強制執行はできません。この契約書を公証人役場へ債権者債務者(保証人がある場合は保証人)がそろって提出し公正証書として完成することで初めて債務不履行の時に銀行口座を凍結するような権限のある書類になります。
なので、契約書を公正証書にしなければ、毎月決まった給料のあるサラリーマンでも給料を差し押さえられることはありません。
動産競売についても生活に必要な家財を差し押さえることはできず、失うとしても骨董や宝飾品と言ったいわゆる「贅沢品」のみです。
それらも動産競売のその場に知人を呼び、競落してもらったうえで供託してもらえば、いくら債権者と言えども勝手に手を付けることができなくなります。
適切な対処法
元々資力がないにもかかわらず、ノリと勢いにあおられて高額商品を押し付けられた、いわば被害者です。自身を卑下したり後ろめたい気持ちになる必要は一切ありません。
払わないのではなく、払えないというスタンス
もとはと言えば、月数万円~十数万円の返済が滞るところから始まったのですから、いい恰好をする必要はありません。
たとえ5万円であっても、生活のために必要なお金です。生活を犠牲にして銀行を儲けさせる必要はないのです。毎月5万円ものお金をドブに捨てるような状況ではないことをまず訴えましょう。
自己破産は逆効果
残債が支払えないということで自己破産を選ぶ人が多くいらっしゃいますが、これは筆者からすれば逆効果です。家を失い禁治産者になってしまったのではあなたは二度と再起できません。
自己破産をして免責が下りると10年間禁治産者というのは法的な話であって、商売の世界である金融業界ではそうはいきません。
自己破産をすると官報に記載されます。金融機関は官報の情報をデータベースに蓄積していますので免責期間が明けて復権してもあなたが破産した事実はは永久にすべての金融機関に残ります。
消滅時効の援用を経て個人信用情報がきれいになれば、不履行の情報を知りえない他業者からは再び融資を受けることができます。
競売より任意売却
競売には利害関係人しか絡むことができませんが、任意売却は違います。任意売却は銀行と残債についての交渉を行い、債権額より低い金額で抵当権を外すという銀行の「任意」を取り付ける売却法です。当然残債の扱いについてもプロの交渉術が光るところであります。
競売開始決定通知が届いてもあわてるなかれ、最悪買受人がお金を払い込むまで競売は取り下げることができます。
全てを失う前にまず相談してみてはいかがでしょうか?